美容医療におけるクーリングオフ制度
2024/09/30
無料体験等の広告を見て、体験の申込みをした後にしつこく勧誘されてしまい、無料でしてもらった手前、断りにくくなり、高額な美容医療の契約に申込んでしまうことがあります。その後、施術しても効果が感じられないことや肌に合わないことなどの理由で止めたいと伝えても、「中途解約はできない。」と言われてトラブルに発展することがあります。本ブログでは、クーリングオフ制度の基本を解説するとともに、美容医療に関連する具体的なケースや実践的なアドバイスを提供します。クーリングオフがどのように働くのか、その手続きの流れや注意点を詳細に解説することで、美容医療において安心してサービスを受けることができるようにサポートします。
目次
◎クーリングオフ制度とは?その基本を知ろう◎
クーリングオフ制度とは、契約後、一定期間内であれば、契約をなかったことにできる制度です。契約後8日以内であれば、書面での通知により無条件で契約を解除できます。このクーリングオフ制度を使えば、違約金や損害賠償金を支払う必要はなく、すでにサービスを受けていても、その分について代金を支払うこともありません。また、支払った代金がある場合は、全額返金されます。ただ、クーリングオフには例外も存在するため、全ての契約に当てはまるわけではない点にも留意が必要です。その中で、エステ、美容医療、学習塾、家庭教師、語学教室、パソコン教室、結婚相手紹介サービスは「特定継続的役務提供契約」として、該当する場合はクーリング・オフ制度を使えます。クーリングオフ制度を理解し、適切に行動することで、不当なトラブルを回避することができます。このブログを通じて、美容業界のクーリングオフ制度について正確な知識を得て、安全なサービス利用につなげていただければ幸いです。
◎クーリングオフ制度の対象となる美容医療サービス◎
特定商取引法において、「特定継続的役務提供契約」に該当する契約や、2017年12月1日以降に取交した契約で、特定商取引法施行令(政令)及び特定商取引法施行規則(省令)に定められた要件を満たす場合は、特定継続的役務提供の適用を受けます。なお、美容医療とは、「人の皮膚を清潔にし若しくは美化し、体型を整え、体重を減じ、又は歯牙を漂白するための医学的処置、手術及びその他の治療を行うこと(美容を目的とするものであって、主務省令で定める方法によるものに限る)」と定義されています。具体的な要件は以下のとおりです。
○美容医療サービスの施術期間が1カ月を超え、金額が5万円を超える契約
○脱毛:光の照射又は針を通じて電気を流すことによる方法(例:レーザー脱毛、針脱毛など)
○にきび、しみ、そばかす、ほくろ、入れ墨その他の皮膚に付着しているものの除去又は皮膚の活性化:光若しくは音波の照射、薬剤の使用又は機器を用いた刺激による方法(例:レーザーや超音波を照射する機器による治療、ケミカルピーリングなど)
○皮膚のしわ又はたるみの症状の軽減:薬剤の使用又は糸の挿入による方法(例:ヒアルロン酸注射、糸によるリフトアップなど)
○脂肪の減少:光若しくは音波の照射、薬剤の使用又は機器を用いた刺激による方法(例:レーザーや超音波を照射する機器による治療、脂肪溶解注射、脂肪を冷却する機器による治療など)
○歯牙の漂白:歯牙の漂白剤の塗布による方法(例:ホワイトニングジェルを注入したマウストレーを装着する治療など)
クーリングオフを利用する場合◎
先ほど説明した「特定継続的役務提供契約」に該当する美容医療サービスを契約した場合、契約書面を受け取った日を1日目として8日間は書面等を送ることにより無条件で契約を解除することができます。書面で発送する場合は、簡易書留や特定記録郵便、内容証明郵便など、相手が書面を受取ったことが記録に残る方法により発送します。また、クレジット契約により代金を支払っている場合は、クレジット会社にも同時に同じ通知を送ります。そして、送付した書面のコピー(全ページ)や郵便局で受け取った「受領証」を保管しておくことも重要です。クーリングオフの詳しい手続き方法は、国民生活センターのホームページ等で確認することができます。
◎クーリングオフ期間が過ぎた場合◎
クーリングオフは制度は、申込みをした契約を無条件に解約できるため、非常に強力な制度です。しかし、その反面、行使期間が短いため、解約したいと考えた時には期間の経過によりクーリングオフを利用できないことがあります。このようにクーリングオフ期間が過ぎてしまった後でも、事業者に特定の禁止行為の違反があった場合、取消し制度を使えば、契約をなかったことにすることができます。特定の禁止行為に当てはまる場合とは、次のとおりです。どれかに当てはまれば、取消し制度を利用して契約をなかったことにできます。
○「契約に関する事項で、契約するかどうか決めるときに判断材料となる重要事項」に関して、勧誘の際にうその説明をし、その結果、そのうその説明を信じたままの誤った認識により契約した場合。
○「契約に関する事項(サービスの内容・効果、購入しなければいけない商品、サービスの金額、支払時期、支払方法、契約期間、クーリング・オフできること等)」に関して、わざと説明せずにその「契約に関する事項」はないと誤解させて契約した場合
この取消し制度は、事業者に対して送った取消しの通知が事業者に到着することにより、申込みや契約が取り消されて、申込みや契約時にさかのぼって契約がなかったことになります。その結果、当事者は原状回復義務という契約時の状態に戻す義務が生じますので、例えば、代金を受け取っていたら、その代金を返還したり、商品を受け取っていたら、その商品を返還したりすることが必要になります。
◎クーリングオフを利用できない場合◎
申込みや契約をした美容医療サービスが「特定継続的役務提供契約」であれば、クーリングオフ期間が経過した場合や取消し制度を使うことができない場合でも、契約期間内であれば理由を問わず中途解約をすることができます。この中途解約は、クーリング・オフや取消制度とは違い、将来に向かって契約の効力がなくなります。そのため、過去に受けたサービスの代金は支払わなくてはいけませんが、前払いしているサービスの代金については、返金してもらえます。その際に、事業者が消費者に対して請求できる、解約時に支払う費用の上限額は、特定継続的役務提供の対象業種ごとに定められています。美容医療サービスの場合は、支払い済代金との差額が下記の負担額を上回っている場合は返金を受け、不足がある場合は追加の支払いをします。
○サービス提供前:2万円
○サービス提供後:すでに提供されたサービスにかかる料金+5万円または未提供のサービスにかかる料金の20%に相当する額のいずれか低い方
なお、特定商取引法に該当しない契約は、事業者が定める解約に関する特約に従うことが原則です。キャンセル料や違約金の金額に納得できない場合は、これらの金額の内訳を事業者に確認してみましょう。美容医療サービスを利用する際には、クーリングオフの制度を理解し、万が一の際に備えることが必要です。
美容医療サービスに関するクーリングオフのお悩みは当事務所へご相談ください。
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