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民法改正における時効の変更点

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民法改正における時効の変更点

民法改正における時効の変更点

2024/10/21

 2020年4月1日から、民法改正により時効制度が変わりました。本ブログでは、民法改正前と後の時効の違いを解説します。また、一定の期間が経過することによって権利の取得や消滅を主張することができるようになる時効という仕組みの中でも、今回の民法改正により消滅時効が大きく変更になりました。民法改正前と後の違いを解説することにより、法的知識の向上や実務への応用に繋げることを目指します。

目次

    ◆消滅時効とは◆

     時効とは、長く継続した事実状態を法律上も尊重して法律関係の安定を図るための制度であり、消滅時効は、権利が一定期間行使されない場合、相手方の「時効」の主張によって権利を消滅させる制度です。その結果、時効を主張した相手方は義務を免れます。

    ◆一般的な債権の場合◆

    ①改正前民法→「消滅時効期間」は原則として「10年」

    ②改正後民法→次のうちのいずれか早い方により時効が成立する。

     ・債権者が権利を行使することができることを知った時(主観的起算点)から「5年」

     ・権利を行使することができる時(客観的起算点)から「10年」

     例として、権利行使ができる時から8年経過した後に、債権者がこの権利を行使できることを知った場合、債権者が知ったときから5年ではなく、10年間が経過する2年後に時効が成立します。

     なお、その他の変更点として、定期金債権も次のように改正されています。

    ・改正前民法

    「定期金の債権は、第一回の弁済期から二十年間行使しないときは、消滅する。最後の弁済期から十年間行使しないときも、同様とする。」(第168条1項)

    ・改正後民法

    「債権者が定期金の債権から生ずる金銭その他の物の給付を目的とする各債権を行使することができることを知った時から十年間行使しないとき。」(第168条1項1号)

    「前号に規定する各債権を行使することができる時から二十年間行使しないとき。」(第168条1項2号)

     上記各号のいずれかに該当する場合は消滅時効が完成します。

    ◆短期消滅時効及び商事消滅時効の廃止◆

    ○短期消滅時効

     民法改正前は、一定の債権については、消滅時効期間を1~3年間とする職業別の短い時効期間(例:弁護士の報酬は2年、医者の診療報酬は3年など)の特例が規定されていました(改正前民法第170条から第174条)。しかし、この特例は職業ごとに消滅時効期間が異なっており、誤って適用されることもあったため、今回の民法改正によりこの職業別の短期消滅時効は廃止されました。

    ○商事消滅時効

     商行為(取引)による債権については,旧商法522条により消滅時効期間を5年と定められていました。民法改正に伴い、この商事消滅時効も廃止され民法の規定に統一されることになりました。

    ◆不法行為による損害賠償請求権◆

     改正前民法では、不法行為による損害賠償請求権は、被害者又はその法定代理人が「損害及び加害者を知った時から3年間」行使しないときは、時効によって消滅する(改正前民法第724条前段)と定められ、さらに、「不法行為の時から20年」を経過したときも、同様とする(改正前民法第724条後段)と定められていました。また、判例は、この後段の「不法行為の時から20年」は、消滅時効ではなく除斥期間であるとしていました。そのため、消滅時効のように中断や停止をすることができず、不法行為の時から20年が過ぎてしまうと、自動的に損害賠償請求権が消滅するという結論になってしまう可能性がありました。

     一方、改正後の民法では、不法行為に基づく損害賠償請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年又は不法行為の時から20年の経過により消滅時効が完成すると定められました。今回の改正において、3年という時効期間については、変更されませんでしたが、不法行為の時から20年という期間は、消滅時効期間であることが明記されました(改正後民法第724条2号)。その結果、この20年という時効期間は、後述する完成猶予や更新により時効消滅を阻止できるようになりました。

    ◆生命・身体の侵害による損害賠償請求権の特例◆

    ○改正前

     生命・身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効期間について、不法行為に基づく場合は損害及び加害を知った時から3年(20年の除斥期間)、契約責任から生ずる債務不履行に基づく場合は、権利を行使することができる時から10年でした。

    ○改正後

     改正前民法では、不法行為に基づく場合と契約責任から生ずる債務不履行に基づく場合とで消滅時効期間が異なっておりました。しかし、これらの損害賠償請求権は両立するものであり、例えば、勤務中に怪我をした労働者は、不法行為責任と契約責任の両方を主張して損害賠償請求をすることができます。また、人の生命や身体に関する利益は財産的な利益よりも保護すべき度合いが強く重要な法益であるため、不法行為による損害賠償請求権の場合でも、契約責任から生ずる債務不履行による損害賠償請求権の場合でも、消滅時効期間が統一され、次のとおり定められました。

    ・民法改正後の生命・身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効期間

     被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から「5年」

        又は

     不法行為の時から「20年」

    ◆時効の更新と完成猶予◆

     改正前民法では、消滅時効の完成を阻止する事情として、「中断」、「停止」という用語がありました。改正後民法では、これらの用語を新たに変更し、「中断」を「更新」、「停止」を「完成猶予」としました。

     例えば、消滅時効が完成する前に、債権者から裁判を起こされて判決が出た場合や強制執行されて財産を差押えされた場合、権利を行使したことになる結果、時効が更新され、判決の確定や強制執行手続き終了後、新たに時効期間が進行します。一方、裁判や強制執行が取下げにより終了した場合は、時効は更新されず、終了時から6ヶ月間は消滅時効の完成が猶予されます。

    ◆民法改正に伴う経過措置(適用関係)◆

     民法改正により消滅時効制度の変更があるため、附則において経過措置が定められており、一般的な債権については,改正民法の施行日である2020年4月1日以降に生じた債権に適用されます(民法附則10条4項)。

    ・債権発生時期が2020年3月31日以前の場合→改正前の消滅時効期間が適用

    ・債権発生時期が2020年4月1日以降の場合→改正後の消滅時効期間が適用

     契約時期により消滅時効期間が異なる場合もあります。自分で判断ができない場合や迷う場合は行政書士などの専門家に相談や依頼することをお勧めします。

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